二刀流マネジメント
2011.10.16
今月10日に発売となったリクルートのWorksの特集テーマは「対話=ダイアログで紡ぐ 人と組織の未来」。
特集の中で私のインタビュー「ピラミッドにネットワークの良さをいかに取り込むかが企業の課題(p.19〜21)」も掲載されています。
このインタビューの中でお伝えしたかったメッセージの1つは、『マネージャーやリーダーには二刀流が求められる』ということでした。1つは、官僚型マネジメントシステムを具現化したピラミッド型の組織構造を動かす方法。もう1つは、自律的な人間同士が様々な情報や想いを共有する場としてのネットワーク型の組織構造を動かす方法です。
人には得意不得意があるでしょうが、マネージャーやリーダーはこの二刀流のどちらも使いこなしていかなければなりません。前者のピラミッド型を動かす方法には、計画、公式の役割分担と権限付与、支持命令、報連想(報告・連絡・相談)、評価、金銭的報酬、各種規則の設定など様々なものがあります。こちらの方法は、どちらかというと左脳的なので二刀流の「左の刀」と呼ぶことにしておきましょう。
一方、後者のネットワーク型を動かす方法としては、ヴィジョンの共有や文化のマネジメントが必要で、そのためには対話と内省が重要です。こちらの方法は、どちらかというと右脳的ですから「右の刀」と呼ぶことにしましょう。
左の刀は、集団が目標を安定的かつ効率的に具現していく上での必要条件と言えます。左の刀が得意な人は、この刀を用いて多くの問題を回避できることを熟知していらっしゃいます。ただし、この左の刀ばかりを用いていると、この刀によって動かされる人々は単に役割をこなす代替可能な道具としかみなされなくなり、人々の心には不満や怒りが募って、やがて想いの部分ではついていけなくなっていくことがあります。
右の刀は、集団が団結し、可能性を追求し、新しいものを創造していく上での必要条件と言えます。右の刀が得意な人は、場の空気や職場の人間関係が人々の想いやモチベーションに与える影響を熟知し、対話を深めながら人間関係や情報ネットワークの質を向上させ、人々から新たなアイデアの発見や挑戦へのモチベーションを引き出します。ただし、この右の刀は、すぐには効果が現れにくく、しかも人間関係のメンテナンスには多くの時間と労力を割かねばならず、必ずしも効率的とは理解されません。また、右の刀は、コミュニケーション能力の低い人や怒りなどの感情をコントロールすることが苦手な人にも扱うことが難しい面があります。
組織を活性化していく上で、どちらの刀がより重要かという議論はあまり意味がありません。どちらの刀も必要で重要なのです。二刀流を使いこなすには、様々な工夫があります。マネージャー自身、自分にとって不得意な刀があれば、その使い方を訓練するということも1つの工夫ですし、役割として右の刀と左の刀を別の人で分担することも工夫です。多くの企業では、左の刀についてはかなり精緻に仕組み化されていることが多いのですが、右の刀については仕組みがまだまだ整っていないケースが多いように見受けられます。そこで、右の刀についても仕組み化しておくことも大切な工夫の1つになります。例えば、始業時にメンバーがそれぞれに今抱えている状況を想いと共に一人1分ずつ話すことにするといったことを仕組み化するなどです。
二刀流の訓練方法や仕組み化については、かなり知見がたまりつつあるので、これはまた別の機会にお伝え出来ればと想います。