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論文「内省経験の差がもたらす修羅場におけるリーダーシップの違い」

しばらくブログのアップをお休みしておりました。やはり手軽なツィッターに重心が移行しつつあるというのもありますが、ここしばらくは原稿の執筆に集中しようと思い、随分と時間配分を変えております。少し先になりますが秋頃から徐々にブログも復活させていきたいと思います。

さて、久しぶりのブログのエントリーは、八木の新しい論文がファミリービジネス学会から出版されましたのでそのお知らせです。タイトルは「内省経験の差がもたらす修羅場におけるリーダーシップの違い:ファミリービジネス後継経営者の事例研究を通じて」、同英文タイトルは “The effect of differences in levels of self-reflection experiences on differences in leadership style through hardships: From family business successors’ case studies” です。

論文要旨(日・英)を以下に転載しておきます。

論文要旨

本稿の目的は,ファミリービジネスの後継経営者がリーダーとして成長するために,どのように内省経験を深めることが出来るのかについて事例を通じて考察し,含意を述べることである.本稿で取り上げた事例は,修羅場と呼ばれる極めて困難な経験に対する後継経営者のリーダーとしての対応である.このような経験をどのように受け止め,対応するかについて,特に内省経験が多い人と少ない人で比較し,どのような点において違いがあるのかを考察し,実務家,特にファミリービジネスの後継経営者の方々に対する役立ちを意図した含意を抽出した.事例から示唆された内省経験を深め,リーダーシップを高めるための含意は次の4点である.(1)判断を保留する (2)自分に見えていないことがないかを探求する (3) 他者の想いや背景を深く受け止める (4) 自分自身がどうありたいのかを問い直す.

キーワード:内省経験,後継経営者,リーダーシップ,修羅場,メタ認知

“The effect of differences in levels of self-reflection experiences on differences in leadership style through hardships: From family business successors’ case studies” Journal of the Japan Academy of Family Business, 2010.

Yoichiro YAGI, Kagawa University Business School

Abstract

This study looks at some cases where family business successors spent time in self-reflection and discusses the implications of how these experiences can help successors grow as leaders. Cases of family business successors at the helm of their company while experiencing extreme hardship are used. The author examine how did the successors manage to take control of these situations, and more specifically, what points were different between successors with many self-reflection experiences and successors with few experiences. The author then educes what was useful from these experiences for business people in general, especially family business successors. After consideration, 4 points were implied to significantly impact the growth of leaders. 1) Defer judgment, 2) Look for something you missed, 3) Accept other peoples’ ideas and background, and 4) Ask yourself what you want to be and your goals are.

日経トップリーダー 3月号・4月号 修羅場の後継学

日経トップリーダーの4月号が発売になりました.4月号には「修羅場の後継学  父に認めてもらおうと新規事業に進出し失敗」を寄稿しています.また,1ヶ月前になりますが3月号にも同じく「修羅場の後継学 父が突然、脱同族経営を宣言」を寄稿しました.今回は,特にファミリービジネスで起こりやすい父と子の葛藤から生じたリアルな修羅場のストーリーです.



振り返ると去年の4月から連載を開始してあっという間に1年以上が経っていました.編集部の方からも読者の方からの反響がよいということで,実は当初3ヶ月のお約束でスタートした連載でしたが延長を繰り返して1年間続けることになりました.この間,何度も取材のために北から南まで全国を出張してきました.読者の方々からのご感想のメールや,事業承継やリーダーシップについて話し合いたいので是非お会いしたいと書いて下さったメールも何通も頂き,とてもうれしかったですし,ネットワークを広げることも出来ました.

経営者の友人やコンサルタントをしている友人の中には,八木 が連載をはじめたのをきっかけに日経トップリーダーを読み始めてくださった方も何人かいらして,よくポジティブなフィードバックや修羅場情報を頂きました.これらもいつも励みになっています.当たり前のことかもしれないのですが,単に「見たよ!」とか「面白かった!」みたいな短いものも含めてフィードバックを頂けることがこんなにうれしいものだと実感し,私も負けじとフィードバックするようになりました.

修羅場に関する個人的な経験を語って頂く取材で大変な点は,やはりそういう経験を持った方々に出会うための事前の情報収集だと思います.取材をさせて頂いても,記事としてまとめるには修羅場の程度がそれほどではなかったりすることもありますし,ご自身の修羅場を語りたがらず取材をお断りになる方もいらっしゃいます.連載をはじめてから「いい修羅場ないかな?」とアンテナを張り巡らせる修羅場ハンターになっていますが,そうそう頻繁に出会えるものでもなく,修羅場のお話を聴かせて頂けるとお宝に出会ったようにうれしくなります.取材に応じてお話しして頂いたに方々も,それまであまり人に語っていなかったことを言葉にしてアウトプットすることで新たな視点を得られる方が多く,ストーリーテリングの効果が大きいことを感じます.

今年はこれまでにないほど早い仕事のペースになっているので,あとどれくらい修羅場ハンターを続けられるかわかりませんが,続けられる限りは楽しんでやっていきたいと思います.これからもご感想やご意見,取材に関するご依頼等,楽しみにお待ちしております.メールはこちらからお願いいたします.

調査月報2月号 後継経営者のリーダーシップを高める内省経験

日本政策金融公庫が出版する調査月報(2010年2月号)に寄稿しました.



タイトルは「後継経営者のリーダーシップを高める内省経験」です.

内省とは何か,何故内省がリーダーシップを高める上で有効なのかといったことについて述べ,事業承継をしたファミリービジネスの後継経営者の事例研究を通じて内省経験を深めるポイントを紹介しています.

内容にご関心のある方は是非ご一読頂ければと思います.

日経トップリーダー2月号 修羅場の後継学

ここのところすっかりブログでのお知らせが出来ておりませんでしたが,日経トップリーダーの連載「修羅場の後継学」は続いております.おかげさまでもうすぐ1年になります.

2月号は,「息子派と父派に分かれ社内が激しく対立」という内容です.毎号記事を書かせて頂く度に,ご自身の修羅場経験について取材に応じて下さる後継者の皆様には感謝の気持ちで一杯になります.メールでも同じ修羅場の境遇にある方や後継者の方々からメッセージを頂く機会が増えてきました.とてもうれしく思っております.ありがとうございます!

ご感想ご質問は大歓迎です.またご自分の修羅場経験について八木から取材を受けてもいいというご連絡もドシドシお待ちしております!メールはこちらから

日経トップリーダー11月号 修羅場の後継学

遅ればせながらのご案内ですが,11月1日,日経トップリーダーの11月号が発売になっておりました.

今月の修羅場の後継学は「創業者の父が暴走し社内が大混乱に陥る」という事例です.親子という家族の関係性が企業内での上司と部下としての関係性にも強い影響を与え,複雑な状況が生み出されているケースです.

こうした複雑な状況にある親子間で,対話のきっかけや場作りをすることは,それまでの長いいきさつがあるために不可能のように思われていらっしゃる後継者の方もいらっしゃいます.しかし,そのような状況であっても後継者の方の内省による自己変革と,場作りの知恵を活かすことによって可能になる場合も少なくありません.誌面では紙幅の関係上その辺りのことを詳しくご説明できないのがちょっと残念です.



記事に関するご感想ご質問等はこちらからどうぞ.お返事は必ず出すようにしています.

内省がリーダーを育てる:ファミリービジネス学会 第2回全国大会

今日はファミリービジネス学会の第2回全国大会でした.

私も朝一番で「ファミリービジネス後継経営者の内省経験とリーダーとしての有効性の関係」というタイトルの発表をさせて頂きました.

会場は慶応義塾大学大学院経営管理研究科(慶応ビジネススクール).自分の母校での発表ということで感慨深いものがありました.校舎の建物が新しくなっていて,高級フレンチ・レストラン,アイリッシュパブ,タリーズ・コーヒー,スポーツクラブなども入っていて昔の校舎とは比べ物にならないくらいに豪華な感じです.

発表の方は,内省という概念の定義,後継者による内省経験がなぜリーダーの有効性を向上させるのかという仮説,仮説に関する調査とその結果を中心にさせて頂きました.質問紙調査に回答くださった3,500社以上のデータによって内省がリーダーの有効性に強い影響を与える要因であることを実証的に明らかにしました.

発表後も沢山の方々からご質問やコメントを頂きまして,特に内省に関する高い関心や興味深い視点を沢山提供して頂き大変うれしく思いました.同じトラックで発表された飯盛先生からも内省の重要性について別の視点から何度も強調して頂いて心強かったです.

神戸大学の加護野先生から頂いたコメントも大変興味深くためになるものでした.加護野先生によれば,経営者として内省を重視していた松下幸之助は,部下の内省を深めるために意識して「叱る」ということをよくしていたそうです.叱り方にも松下幸之助の独特の考え方があり,「小さな失敗」は叱り,「大きな失敗」は叱らずになぐさめたのだそうです.小さな失敗ほど人はよく考えずにしてしまっていることがあるからだそうです.なるほど,まさに「小事は大事」ということなのですね.

コメントを頂いた皆様,本当にありがとうございました!そして,全国大会の開催にご尽力いただいたファミリービジネス学会の皆様,心より御礼申し上げます.

ところで,現在は後継経営者の内省経験を深め,リーダーシップを向上し,組織を活性化する具体的な方法論の開発に力を入れています.すでに具体化された方法論を基にご依頼を頂いた企業からの協力を得ながら導入の段階に入っており,将来的にはより多くの企業で実施と検証を重ね,一連の方法論として精緻化していきたいと考えています.こちらもまた近い将来,別の機会にご紹介できると思います.

日経トップリーダー9月号 修羅場の後継学

本日,日経トップリーダー9月号が発売になりました.

今月も「修羅場の後継学 『自分はすごい』と勘違い 父のダメ出しで自省」という記事を提供しています.

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修羅場というものは誰しも避けて通りたいものだと思います.しかし,実際には経営者の方々の8割近くははそのような状況をご経験されています.取材を通じて見えてくることは,多くの経営者の方々にとって,そのような修羅場のような状況だからこそ深めることが出来る学びや,見えてくる自分や他者の側面というものがあるということです.

ご興味のある方は,是非一度手に取ってお読み頂ければうれしいです.

ご感想ご質問等はこちらからどうぞ.お返事は必ず出すようにしています.

それから話が脱線するのですが,トビムシ竹本社長のインタビューが同じ日経トップリーダーのHPに掲載されていました.

先日お会いしたのですが,竹本さんは「森林の再生」という日本にとってとても重要なテーマに取り組んでいらっしゃいます.岡山西粟倉村の「共有の森ファンド」はその取り組みの一例です.こちらのインタビューもご興味のある方は是非お読みください.

実は今月,竹本さんには香川に来て頂いてお話しをして頂けることになっているのです.このことは改めて別のエントリーでご案内したいと思います.

日経トップリーダー8月号 修羅場の後継学

すっかり告知するのが遅くなってもうすぐ9月なのですが,8月1日に日経トップリーダー8月号が発売となりました.

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私も「修羅場の後継学:井の中の蛙と気づきショックに襲われる」という記事を提供させていただきました.

特に同族企業における後継経営者のリーダーとしての成長や組織の進化などにご興味のある方は,一度お手に取って頂ければうれしく思います.

ご感想やご質問についてはこちらの方からお気軽にお送りください.

メールには必ずお返事をさせていただいております.

実は最近この記事をご縁として,事業承継後,新しい経営者のもとでの組織開発についてご相談を頂きました.

その後,その経営者の方とは何度かやりとりを重ね,現在,具体的な組織開発のプロジェクトが動き始めています.

元々,私が専門とする研究テーマは組織行動論をベースとしたリーダー人材の育成と組織開発であり,私の中でファミリービジネスや事業承継はそのための研究フィールドの一つとして位置づいています.

したがって,こういった内容につきましても可能な限り対応をさせて頂いております.

基本の大切さ

今日は朝8時集合で東京・上荻にあるウィンローダー様を取材させていただきました.

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同社は,1950年に現社長の祖父によって小口集配業としてスタートしました.現在では東京都下を主な事業エリアとし,トラック120台以上,倉庫面積8000坪以上を保有し,特に現社長が立ち上げたエコ物流エコランド事業,家電設置配送等によって注目を集める元気な企業です.

朝8時集合の企業調査は珍しいのですが,同社では毎朝掃除とユニークな朝礼が行われており,それを是非見学させて頂きたいと希望してこの時間からの訪問になりました.

今回の取材の主たる目的は,ファミリー企業であるウィンローダーの3代目高嶋民仁社長に後継者から経営者へと成長される過程での様々なご経験をお聞きし,事業承継のあり方の一事例を学ばせて頂くことでしたが,それ以外のことでも多くのことを学ばせて頂きました.この取材記では,それ以外の部分の中から少しご紹介したいと思います.

まず朝8時に同社に伺うと,いきなり「おぉ!?」

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なんとウェルカムボードが!

ボードがあるにも関わらず入り口でまごまごしていると,社員の方が私を見つけてくださって「香川大学の八木様ですね.お待ちしておりました」と明るく声をかけてくれます.

訪問のことが事前にしっかりと社員の方々に共有されていることに感心すると同時に,明るく歓迎して頂いて素直にうれしくなりました.

そして早速,お掃除に参加.

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タバコの吸い殻が多かったです.

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会社も会社周辺も皆さんピカピカにしていました.私も近所の方に「ありがとうございます」と言われて,思わず「いえいえ」とかわけのわからない返事をしたりしました.私だけ普段馴れないことをしている感じがかなりありました.

掃除が終わると朝礼です.ウィンローダーでは元気朝礼と呼ばれています.

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朝礼で挨拶をされる高嶋民仁社長.

全員大きな声を出しての挨拶や「ハイ訓練」,経営理念や標語の唱和,周囲の皆さんとの握手,今日の仕事の予定の共有などがテキパキと進められ,私も一緒に参加させて頂きました.ハイ訓練では私の声が一番小さく,進行の方にダメ出しをされたりして,これも思いっきり普段馴れないことをしている感じがありありでした.

私自身馴れていない部分があったとはいえ,こういう朝礼は本当に大切であり,学ぶことが多いものだと思いました.例えば挨拶に関して言えば,挨拶はコミュニケーションの基本と言われますが,意外にも出来ていない人が多いものです(もちろん自らの反省も込めながら書いています).特に朝,仲間(社員)同士の明るい挨拶は一日をはじめる上で前向きな気持ちを引き出してくれます.きちんと相手の目を見て,明るい声が飛び交うウィンローダーの皆さんの挨拶は実際にとても清々しいものでした.私はこの朝礼に参加させて頂いて,朝から「元気をもらったなぁ」と素直に思いました.さすが元気朝礼と言うだけの内容がありました.

振り返ってみると私の職場である大学は自由な場であるとよく言われます.言論や個性の表し方において積極的に自由を尊重しようとする点は間違いなく素晴らしいのですが,必ずしもそれが十分には活かされていない面があるかもしれません.香川大学だけではなく,仕事柄多くの大学に立ち寄りますが,どこも挨拶が元気に飛び交う場とは言い難い感じがします.大学人は,自由であることの価値を活かし,それぞれがより活発に言論や個性を発する為に,コミュニケーションの基本である挨拶をもっとしっかりと出来るように学ぶ必要があるのかもしれません.コミュニケ—ションの質が低い場では,言論や個性の表出は衝突や不理解を生みやすくなり,創造的なコラボレーションの機会を減らし,ストレスを引き起こすように思えます.

今日の元気朝礼を見せて頂いて,自分の職場を振り返った時,特に教職員と学生の間で十分かつきちんとした挨拶が交わされていないように思われたのは残念でしたし,今後の課題であると感じました.挨拶は社会に出てから学ぶものというのは,やはり本来的ではないですね.挨拶の訓練や大きな声でのハイ訓練をするということは,百聞は一見にしかずで,別にやらされ感もなかったですし,自由を否定する全体主義的な感じや個人の個性や自発性を奪うようなものでもないと感じました.実際,ウィンローダーの社風は社員それぞれが闊達に意見をしあえる自由な感じでした.挨拶だけがそのような社風を作り上げた要因とは思いませんが,コミュニケーションの基本がしっかりと出来ていることが,コミュニケーションを活発化する上で重要な基盤としての役割を果たしているように感じられました.

朝礼の後,社員の皆さんの机の引き出しの中身を見せて頂いたのですが,ここでは5Sが徹底されていました.

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トイレに入るとなんと石鹸の位置まできちんとしています.

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基本がしっかりした会社という印象を次々と受けました.社員の方のご説明では,サラリーマンは一人当たり一日平均で文房具等の物やファイルなどの情報を探すのに約7分かけているそうです.職業柄どういう調査方法でそのことを調べたのか気になりましたが,そうだとすればとてももったいないことです.

色々なことに感心した後,高嶋社長と社員の方へのインタビューを終え,建物の外に出ようとすると,

再び「おぉっ!!」

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本当にすごい会社だなと思いました.

ウィンローダーの皆様,お忙しいところお時間を割いて多くのことを学ばせて頂き,本当にありがとうございました!!!

日経トップリーダー7月号 修羅場の後継学

日経トップリーダー7月号に記事「修羅場の後継学」を寄稿しました.

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事業承継後に社内の変革を手掛けた経営者の方が,ベテラン社員と若手社員の間に対立を引き起こし,それを解決するにあたって内省型リーダーシップを発揮された事例です.

ご興味のある方,是非お読みください.

ご感想やご質問はいつでも歓迎です.

こちらのフォームからお送りください.

これまでに頂いたご感想やご質問には既にお返事をさせていただいております.

いずれも大変参考になり,励みになりました.

ありがとうございました.

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