プロジェクト研究の開始にあたって
2008.04.12
いよいよ新学期に入り、地域マネジメント研究科では2年生のプロジェクト研究がはじまりました。
これはいわゆるゼミ形式で行われている授業ですが、当研究科の開設当初は複数名が1つのグループを構成し、1つのテーマを共同で研究することを標準として想定していたため「プロジェクト」という呼び名が残っていると聞きました。
通常は2名の教員がペアを組んで複数の学生を担当するグループを形成し、プロジェクト研究論文の作成を指導します。
大学などのゼミ選びでは、学生がゼミ回りを行い、希望する教員のゼミに入れるよう面接を受けたりしますが、ここでは基本的に、学生による研究テーマのプレゼンテーションを全教員が聞いた上で、教員間の話し合いで学生の担当、グルーピングを決定します。
どの学生をどの教員が指導するかというグルーピングをめぐっては昨年もそうでしたが、例年かなりの時間が割かれてきたそうです。
多くの時間が割かれる理由は様々です。例えば、テーマが十分明確になっていない学生も少なくない段階で、プレゼンされたテーマが時間の経過と共にどのように明確になっていくかをある程度推測し、それに対するベストの担当教員を見極めようとするため、また特定の分野での研究を希望する者が多く現れて(たとえば、マーケティングに学生が殺到するなど)、希望者全員をその分野の専門教員のグループに入れられないという状況が生じることがあるため、複数の専門分野にまたがった研究を希望する学生に対し、どの教員が担当するのがよいのかを検討するため、等々です。
いずれにせよこの期間で、これから1年間、多くの時間を共に過ごす教員を決めることになります。
学生の皆さんは可能な限り自分が何をテーマとしたいのかを明確にするよう努め、プレゼンテーションの時にきちんと説明するようにしてください。何をテーマとすべきかについては様々な見解があると思いますが、私は次の点が重要だと考えます。それは自分の卒業後のビジョンや取り組みたい課題とテーマがしっかり結びついていることです。このことは自分のキャリアを今後どのように構築していきたいか、そのビジョンや現実の課題が明確であることが前提になりますが、可能な限りそのビジョンや課題に役に立つ研究をするべきだと考えます。修士課程に入り色々な理論などを学ぶと、あれもこれもやりたくなったり、迷ってしまう気持ちがでてくるのもよく理解できます。しかし、1年間も1つのテーマを追い続けるわけですから、自分の人生と無関係なことであれば途中でモチベーションを維持できなくなる可能性もあります。自分の人生にとってこのテーマが役に立つかどうかをまず真剣に見極めるようにしてください。
次に重要だと思う点は、「実践のための学問」という視点をテーマ選びの際に忘れないようにするということです。慶応義塾大学の國領二郎先生は次のように指摘しています。「学問の自己目的化に要注意。特に理論の純度を高めようと夢中になっているうちに、現実から離れがち。実社会の要請に応えられない空論を作っても意味がない。現実社会で動く仕組みを作って、役立てる使命を忘れずにいよう。評価は実践の中で受けよう」。その実現は簡単なことではないことは私自身もよく理解しているつもりですが、社会への貢献を目的として研究するという志は常に持っていたいと思っていますし、学生の皆さんにもおすすめしたいと思います。
プロジェクト研究の開始にあたって、グループが決定する前に自分の関心のある領域を研究している教員がいれば、積極的に話を聞きにいくのもよいと思います。自分のテーマを明確にしたり、掘り下げたりする上でも役に立つことがあると思います。