お問い合わせ

blog

組織の創造性を高めるリーダーの視点

昨日は福井県で地域活性化に熱い志を持っているオレボビズスクールさんが主催するビジネスリーダーセミナーで講師を務めてきました。今回のセミナーは、私の研究テーマでもある「 チームや組織の創造性を高めるリーダーシップ」を受講生の方々に身につけて頂くことを目的に設計したセミナーで、丸一日、受講生の方々と楽しく共に学ぶことができました。

今日のブログでは、組織において創造性を高めるという課題は、実は大変奥が深く、しかもリーダーにとって高いスキルを要求する課題であるということについて、少し書いておきたいと思います。

まず言うまでもないことですが、働く人々の創造性を高めることは組織のリーダーにとって極めて重要な課題です。経営環境の変化に適応しようとするあらゆる企業努力、イノベーションや改善への挑戦、これらは全て人々の創造性によって成し遂げられるものだからです。

そして、リーダーシップはそのような創造性を育むための重要な基礎にあたります。しかし、実際には多くの企業において創造性は促進されるよりも殺されてしまうことの方がずっと多いことを経営分野の研究者達は指摘してきました。それは一体なぜでしょうか。組織にとって創造は未来への新たな挑戦であり、そこには当然少なからずリスクが伴います。組織が創造性を育むために適切な条件を持たない場合、組織はリスクを避けて安定を求める傾向を示しやすく、組織の創造性は安易に殺がれてしまうのです。

ではなぜ、組織は創造よりも安定を求める傾向を示しやすいのでしょうか。色々な理由によって説明が可能ですが、ここではマネジメントが発展してきた歴史的な経緯に触れて説明しておきます。そもそも理論的にも実務的にも、マネジメントは歴史的に工場などで働く労働者をいかに効率的かつ安定的に作業をさせるかというテーマに対し、その答えを求める形で発展してきました。

 そのテーマから組織を見る時には、組織には働く人とこれを管理する人という2つの種類の人間が存在しています。管理する人は、働く人を観察し、現場における不都合な出来事を探し出し、それらの出来事を解決しようとします。出来事が起こるとその原因を分析し、解決策を現場に反映させる。具体的に、現場に新しい管理ルールを次々と生み出していきます。新しくルールを生み出すという点で、管理者の活動も一見すれば創造的と言えるかもしれません。しかし、これは本質的には創造ではありません。過去の出来事の連なりから今において何かを作り出したからです。これは改善と呼びます。

 創造とは過去から現在に向けて何かを作り出すことではなく、未来から生み出すものであり、過去からは飛躍した部分を持つものです。過去にないものを作る、それは創造する者が未来に何かを想い描くことから始まる行為です。過去の出来事の連なりから現在に向けて答えを生み出すことを改善と呼び、一方で過去から飛躍した未来を想い描くことから現在に向けて新たな何かを生み出すことを創造と呼びます。そこには過去からか未来からかという時間の流れに対する感覚の違いがあります。

歴史的な経緯の中で「マネジメントとは管理することである」という固定的な観念があたかも当然視されるようになると、組織のリーダーを含め、組織を管理する人達の間で、時間の流れに対して過去から現在の流ればかりを見ようとする感覚が強くなることは当然の成り行きだったと言えます。過去から現在を見て多くのルールを生み出していくと、やがて働く人々は一様な行動をとることとなり、組織は効率と安定性を増していきます。しかし、そのことが未来における環境変化に対して有効な適応を保証するとは限りません。進化論を引き合いに出すまでもなく、変化する環境に対しては固体も変化し、これに新たな適応戦略を用いる必要があるのです。

未来への挑戦は創造の本質的な部分です。管理的志向が強い組織は、未来への挑戦を嫌いますが、それは基本的に過去から現在を見るという感覚が強くなりすぎていて、未来という変化の世界を全く思い描くことが出来ないためなのです。

理想的には、管理と創造は組織内で適切にバランスがとられるべきですが、それが上手く出来ている組織は極めて稀です。比率としては、創業から時間が経過するにつれ、過去からの視点が強くなりすぎて柔軟性を失ってしまう組織が大多数です。

組織がこうした硬直した状況にある場合、そこから脱するためのリーダーシップが求められます。その際、リーダーに求められるスキルの一つが、過去からの視点と未来からの視点という二つの異なる視点を統合することで、一段高い視点を持ち、その視点で時間を自由に行き来できることなのです。もちろんここで言うリーダーとはトップリーダーだけを指すのではありません。ミドルやボトム層にもそのような高い視点を持ったリーダーが大量に必要です。

昨日行った組織の創造性を高めるためのリーダーシップのセミナーでは、未来から現在を捉え、組織や集団の動きを高い視点から捉える訓練も取り入れました。これまで授業や研修を通じてこうした訓練のカリキュラムにはかなりの試行錯誤をしてきましたが、NLPなどの方法論も援用して思考の抽象度を高めることで、最近では短期間でもかなりの訓練成果を得ることが可能であることがわかってきました。

長くなってしまいました。今日はこの辺まで。