実践型社会起業家論 経過報告(1月13日分)
2009.01.15
1月13日は第3回目の実践型社会起業家論の授業でした。講師には鵜尾雅隆さんをお招きし、「社会を元気にする事業とお金の流れ」と題して授業をしていただきました。
さて、授業の中身をご紹介する前に、本授業で言うところの社会起業家とは何を指すのかというお話をしておきたいと思います。学術的な定義は研究者によって多様だと思いますし、実際問題としてあまり定義にこだわる大きな意味はないのですが、最近よくご質問も頂きますし、本授業のお話を紹介する前置きとして記しておきます。本授業では社会起業家を、社会の問題を解決したり、社会をよりよいものにすることを目的として、社会から様々な形で経営資源を獲得し、それを効率的に活用するために、目的を共有する人々と共に活動を組織化し、その運営に携わっていく人々として幅広く定義しています。特に株式会社やNPOなどの法人格によって規定されるものではありません。一般的な起業家・経営者との違いを挙げるとすれば、それは目的における優先順位ということになります。社会起業家にとっては、経済的な収益の最大化や事業そのものの存続は最大の目的ではありません。社会起業家においては、社会的な貢献が他の目的よりも重要度の高い目的になります。ここで示した定義は、元々は神座さんから教えてもらった内容をベースに書き起こしたものです。内容的には私の知る他の社会起業家の方達も同意してくださるものであり、私の授業ではこうした定義を採用しています。
さて、少し前置きが長くなりましたが、鵜尾さんはこうした社会起業家がいかに資金を獲得することができるかという大変重要なテーマを講義してくださいました。私自身、熱意があるという段階と、その熱意を社会の中で形に変えて活動しているという段階の間には大きな川のような隔たりがあると思っています。それは形を創っていくには、想いだけではなくお金や仲間が必要だからです。鵜尾さんはファンドレイジングを職業としてご専門とされていらっしゃる方で、熱い想いを形にしたいという人たちの力強い味方です。
授業の中で私が心に残ったのは、社会起業家は社会の問題を訴え、その解決策を提示し、その解決策に対して「共感」をベースとした助力を社会から得なければならないというお話でした。シンプルに言えば、「思わず共感してしまう」→「だから寄付してみよう」とか「だから出資してみよう」とか「だから一緒に働いてみよう」といった動きを引き起こせるかという点がファンドレイジングで重要なポイントです。
1つの事例として「伝説のホテル」という映像を見せて頂きました。その映像は鶴岡秀子さんという方が、自らの夢である伝説のホテルを実現するために行ったプレゼンテーションが収録された映像でした。私はその映像に感動してぼーっとなり、そして熱いものを感じました。鶴岡さんのプレゼンテーションは、私の中からも思わず「何か協力したい!」という感覚を引き起こしました。そして実際、鶴岡さんは社会に新しい動きを引き起こしています。1軒のホテルも経営したことがなく、1度もホテルで働いたことのない鶴岡さんが、その後3億円以上の出資金を集め、土地所有者の方からホテル用地提供の申し出を受け、一流の建築家が図面を描いてくれたという事実がまさにそのような社会の動きを示すものです。
ファンドレイジングをお仕事としようと決意し、独立し、全国を飛び回っている鵜尾さんの授業から私が感じたことは何より「熱」でした。日本の寄付金市場は2000億円、アメリカではそれが20兆円だそうです。だからこそ日本はこの分野でもっともっと潜在的可能性がある!というのが鵜尾さんの持論です。そして授業では、市民の力で世界をよくしていくためには、社会起業家にもっともっとファンドレイジング力が必要だという鵜尾さんの信念がひしひしと伝わってきました。
13日は授業後も深夜遅くまで鵜尾さんでずっと語り合わせて頂きました。鵜尾さん、熱をたくさん頂きました!ありがとうございました!!!