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知的生産性の向上 内容および文献紹介

先日、香川大学生涯学習教育研究センターが主催する公開講座で「知的生産性の向上」というセミナーを担当しました。受講生の皆さんには盛り沢山の内容でお疲れ様でした。

当ブログを見に来ていただいた皆様に少し概要を説明しますと、全2回(5月15日と5月22日)のこのセミナーは、1回目で知的生産性を高めるための基盤となる技術と知識(目的の設定とモチベーションの管理、効果的な脳・意識の活用法、リラックスした集中状態の作り方、勉強法および勉強時間の作り方、速読および読書法、マインドマップの書き方など)をお伝えし、来週の2回目で各種情報の取り扱い、仮説立案、調査分析、検証と結論づけといった論理思考のエッセンスあるいは一部をお伝えするという内容です。かなり欲張ったというか内容的に盛り込みすぎのセミナーなので、受講すれば必ずすぐに出来るようになるというわけではありませんが、ざっと全体像を捉え、今後何をどのように勉強・訓練していけばよいかの道筋がススッと頭に入ることを意図してプログラムを設計しました。モチベーション管理と勉強法についても時間を割いて解説しましたので、それらも参考に受講生の皆さんには今後楽しくノリノリの姿勢で知的生産性の向上に取り組んで頂ければと思っています。

受講生の皆さんからはセミナー後も大変熱心にご質問をして頂いたり、ご感想のメールなどを頂いたりしてとても嬉しかったです。ありがとうございました。

以下に受講生の皆さんからリクエストのあったセミナー内容に関連する参考文献のご紹介をしておきます。第2回目の論理思考に関連する参考文献は第2回目が終了してからご紹介します。文献の中には現在販売がされていないものも含まれているかもしれませんが、その点はご容赦ください。

―参考文献―

「質問思考の技術」 マリリー・G・アダムス Discovery・・・学習者として自分自身に問いを投げかける意義と視点を解説した好著.  セミナーではここから話を広げて, 問いをコントロールすることで自分の思考をコントロールしましょうというお話をしました.

 「ソース」 マイク・マクマナス VOICE・・・ワクワクについての本. ワクワクできることを粘り強く実現するための応援歌的な本.

「インナーワーク」 W・T・ガルウェイ 日刊スポーツ出版社・・・深い学習と自由な自己表現が可能になるリラックスした集中状態を達成する上で必要となる自己発見のための視点と方法論.

「脳の仕組みと科学的勉強法」 池谷祐二 ライオン社・・・脳の仕組みからすると常識的な学習方法には非効率な部分が多々あることがわかります.

「海馬 脳は疲れない」 池谷祐二・糸井重里 新潮文庫・・・海馬、扁桃体、側坐核などに関する面白くて役に立つ議論が盛りだくさん, ワクワクしたりコツコツ努力したりすることの重要性にも科学的な根拠があることがわかります.

「進化しすぎた脳」 池谷祐二 講談社・・・脳は「自己組織的」に自分を作り上げる, 脳と体の相互規定的関係など.

「楽しみの社会学」 M・チクセントミハイ 新思索社・・・フローと呼ばれる楽しくて集中した状態がどのようなものであり, そのとき人がどのようなパフォーマンスを発揮できるかを実証研究.

「スポーツを楽しむ フロー理論からのアプローチ」 S・A・ジャクソン+M・チクセントミハイ・・・フローを自分自身でいかにコントロールできるかに関する具体的な方法を説明. スポーツ以外にも十分応用可能な内容です.

「あなたも今までの10倍速く本が読める」 ポール・R・シーリィ フォレスト出版…いろいろ試しましたが速読に関しては今ではこれ一冊で十分かと思っています. フォトリーディングをもっと学びたいという方はラーニングソリューションズ株式会社が提供するセミナーもあります. 実は多くの方と同様, 私も本だけではフォトリーディングを信じられなかったのですが同セミナーを実際に受講してみて, それ以後は毎日フォトリーディングをするようになりました.

「本を読む本」 M・J・アドラー+C・V・ドーレン 講談社学術文庫・・・創造するための読書として著者らが提唱したシントピカル読書は使えます.

「頭脳の果て アインシュタイン・ファクター」 ウィン・ウェンガー+リチャード・ポー きこ書房・・・イメージストリーミングをくわしく紹介.

「発想法」 川喜田二郎 中公新書・・・有名なKJ法を解説、続・発想法も出版されています. 細かい情報をカードに書いて出し切り、関連を考察しながらボトムアップで全体像を得ようするアプローチ. 名著なのでここでわざわざ紹介するまでもないのですが, 次にあげるマインドマップとの視点の違いを押さえ, テーマに応じてそれぞれの良い点をうまく取り入れていけるといいと思います.

「ザ・マインドマップ」 トニー・ブザン+バリー・ブザン ダイヤモンド社・・・マインドマップは、まず主題を紙の中心に描き, アイデアや情報を外側へ枝を伸ばすように絵や色などのイメージも盛り込みながら自由に描きます. 楽しいので私自身もよく描いています. それからたまにご質問を頂くのですが、私がマインドマップ用にいつも鞄に入れて持ち歩いているカラーペンはステッドラーの20色です。色がきれいだし、ペンケースも使いやすい構造なので気に入っています。

「『私』は脳のどこにいるのか」 澤口俊之 筑摩書房・・・自我の脳内プロセスを考えるときに極めて重要な概念となるモジュラリティと階層性に関する議論が大変平易に書かれています. 以下のガードナーとミンスキーなどを読む前に同書を読んでおくとさらにわかりやすくなります.

「MI:個性を生かす多重知能の理論」 ハワード・ガードナー 新曜社・・・IQという単一の尺度で知性を測ろうとするのではなく、多重的に知性を捉えることを提唱したガードナーの初の邦訳本です.

「心の社会」 マーヴィン・ミンスキー 産業図書・・・意識のモジュールが階層的なネットワークを作っていることに関する議論. 訳者は慶応義塾現大学長の安西先生.

「脳とクオリア」 なぜ脳に心が生まれるのか 茂木健一郎 日経サイエンス社・・・脳が感じるリアリティである「クオリア」をめぐる議論.

「脳と創造性 『この私』というクオリアへ」 茂木健一郎 PHP・・・著者はクオリアとして自らの内側からわき上がる一人称的文脈に寄り添い、それを引き受けることが創造性への道であると主張されています.