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知的生産性の向上 第2回 文献の紹介

本日、生涯学習センター主催の講座「知的生産性の向上」の第二回目が終了しました。

ご参加くださった皆さんお疲れ様でした。またどこかでお目にかかれることを楽しみにしています。

さて、本日のテーマは論理思考の概要とそれらをビジネスや日常生活に活かすということでした。論理思考は単にプレゼンの準備の時に使うだけではなく、日常の議論などいたるところで使えます。是非上手に活用して頂ければと思います。

今回の講義に関する参考文献を以下にあげておきます。なお、この分野で私が読んだものは古いものが多く、中には廃刊のものもありますが、その点はご了承ください。

紹介の順番は特におすすめの順番ではなく、どちらかというと今日の講義の流れに対応した順番です。

・ 創造の方法学 高根正昭 講談社現代新書・・・何度も読んだ本のひとつです。研究者によって書かれた本ですが、(おそらく)一般向けの本で、因果関係、仮説、命題、記述、説明、検証、概念など普段何気なく使っている(普通の人はあまり使っていないですね)言葉の定義がしっかり押さえてあって、勉強させていただいた本です。同書の中で著者は、方法論とは(中略)自ら行う知的創造のための、基本的な手続きの議論であると述べています。

・知的複眼思考法 苅谷剛彦 講談社+α文庫・・・生れ育つ過程で知らず知らずのうちに身についてしまういわゆる常識的な考え方やものの見方に対して違和感を感じたことのある方に是非おすすめしたい本。そこから脱皮し、自由な視野と自分で深く考える力を身につける教科書的な本です。特に私が気に入っているのは「問題を問うことを問う」というメタな問いに関するp.334以降の議論です。巻末にはおすすめ本のリストもあり、価値のある良書が紹介されています。

・新版考える技術・書く技術 バーバラ・ミント ダイヤモンド社・・・ピラミッド・ストラクチャーを書く教科書として定番的存在です。

・意志決定のための「分析の技術」 後正武 ダイヤモンド社・・・ビジネス分野では通常、分析は意志決定のために行われています(違う目的の分析も世の中には沢山あります)。とはいえ、ビジネス分野と一言で言っても状況は多種多様であり、具体的にどのような切り口で分析していいのか多くの方が迷われます。同書は様々な状況を挙げてそれらに応じた切り口と分析のステップを示してくれていて、お手本集のような構成になっています。まずはお手本から学ぶことがとても効率的だと思います。

・問題解決プロフェッショナル「思考と技術」 齋藤嘉則 ダイヤモンド社・・・ゼロベース思考、仮説思考、MECE、ロジックツリー、ファクトベースなど重要なコンセプトが網羅的に扱われています。これも定番本です。

・世界一やさしい問題解決の授業 渡辺健介 ダイヤモンド社・・・この分野の本は現状では沢山ありますが、同書はそれらの中でも一番読みやすくてわかりやすい本だと思います。したがって最初の一冊としておすすめします。カラフルなイラストも多く、この分野で既に出版されている本と十分な差別化がなされており、出版戦略に個人的に感心しました。

・企業戦略論 上 基本編 ジェイ・B・バーニー ダイヤモンド社・・・戦略論の定番教科書。本日の授業で紹介した戦略分析用のフレームワークもたいていこちらにわかりやすく(?)紹介されています。

・最強組織の法則 新時代のチームワークとは何か ピーター・M・センゲ 徳間書店・・・ビジネスを含む様々な事象を分析する上で大変奥深く洞察に満ちた視点を与えてくれる本。いわゆるフレームワーク思考では見過ごされがちな各変数間の相互作用、時間的経過の影響、人間的成長の重要性などについてシステム思考として紹介しています。

・聞き取りの作法 小池和男 東洋経済新報社・・・インタビューからデータを得るということ、それらのデータを基に論理を構築するということが大変わかりやすく書かれています。インタビューの依頼状まで載せられていて手許にあると重宝します。ただし、現在は入手しにくいようです。復刊が望まれる一冊です。

・「社会調査」のウソ リサーチ・リテラシーのすすめ 谷岡一郎 文春新書・・・世の中の社会調査の半分はゴミと一刀両断している本。やや過激な書き方をしていますがデータの扱い方を体系的に学ぶ機会を持たなかった人には一読をおすすめします。ただ読むと文体への好みがわかれる本でもあります。私は個人的にやや苦手な表現が多いです。。。

・経営のための直観的統計学 吉田耕作 日経BP・・・統計を経営に使いたいユーザーの視点に徹して書かれており、しかも著者の語り口が面白くて読みやすいです。統計アレルギーの方でもおそらく問題なく読めるのではないでしょうか。入門書としておすすめ。 

・新版 生命と場所 創造する生命の原理 清水博 NTT出版・・・論理思考ひいては科学的方法論が前提とすることの多い要素還元主義や直線的因果律に対する疑義が述べられています。特に「補章 読者への手紙:声明を記述する原理について」が近代科学のあり方とその限界を深く考える視点を与えてくれます。

・複雑系の意匠 自然は単純さを好むか 中村量空 中公新書・・・清水と同様に機械論的世界観、直線的因果律に対する疑義が述べられています。特に「序章 科学の潮流」はわかりやすいです。今日講義したことの限界にもつながるのですが、いわゆる論理的思考の限界を考察する上でおすすめします。

・ゲーデルの哲学 不完全性定理と神の存在論 高橋昌一郎 講談社現代新書・・・アリストテレス以来の天才と呼ばれたゲーデルの人物像、そして彼の遺した哲学が一般に向けてわかりやすく書かれている本。特に「第V章 不完全性定理と理性の限界」は、人間の理性の限界とメタ認知への視点を与えてくれます。