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新しい組織論:要素還元型と生命型の併存

慶応義塾大学の高木晴夫先生と中小企業基盤整備機構の笠原一絵さんとの共著でリサーチペーパーを出しました.論文のタイトルは「新しい組織論:要素還元型と生命型の併存」です.本文はコチラカラ読むことが出来ます.

高木晴夫先生は私の大学院時代の恩師(指導教授)であり,今回のように共同で研究をさせていただくことに深い思いを感じます.修士から博士と学ばせていただき,計り知れない学恩のある方といつしか自分が一緒に研究上の議論をしている不思議さやうれしさが混じった気持ちです.高木先生のBlogに『一人では研究できない課題を持ったとき、自分の研究の考え方と価値観を知ってくれている若い卒業生の力を得ることができる幸せを感じ、彼等に感謝した。』と書かれているのを拝見して,そこまで力を育んでいただいたことを感謝せずにいられませんでした.

高木先生がHPに論文の一部を引用されていたので,私も同じ部分を示しておきたいと思います.これは論文の終わりの部分です.

『我々は、今後、これまで要素還元型の研究で十分カバーされてこなかった組織の課題に ついて、研究努力を集中すべきだと考えている。これは要素還元型をやめるべきだという 意味ではなく、今までの研究の視点の中に見落とされてきた部分があったということであ る。その見落とされてきた部分についても、これからはもっと見ていかなければいけない。

本稿で議論してきた通り、要素還元型と対比して、生命型には「自己と他とその関係を 認識し手を下す」という本質的な特徴がある。この部分には特に研究を集中させる価値が あるだろう。この部分は要素還元型の装置としては形成できないからである。また、組織 に要素還元型と生命型が併存することで組織がフラクタルになっているならば、それをい かに組織のマネジメントに活用出来るかといった研究の展開にもなるであろう。


従来の複雑系の研究では、あるものがフラクタル状になっていることを見出しても、そ れがそうなっているという認識の提示で議論が止まっていた。実践のための研究をするの であれば、フラクタルになっていることを、いかにしてマネジメントや社会にとって役に 立つ道具にしていくかが研究されねばならない。組織研究が向かうべき方向は、組織は要 素還元型と生命型が併存し、組織のフラクタル性が存在するということの解明であり、そ の知識を道具として使うための研究をしていくことである。』