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直線的因果律と循環的因果律の対比と対話

以前から,直線的因果律と循環的因果律の間に横たわっていた断絶について一度正面から考えてみたいと思っていました.今回,自分なりに論点を整理し,香川大学経済論叢に「方法論的立場としての直線的因果律と循環的因果律の対比と対話」として寄稿いたしました.

以下,一部抜粋です.

そもそも因果律(the universality of causation)とは哲学の用語である.岩波哲学・思想事典における「因果律」の項目には,すべての出来事には原因があるという因果律の考え方は,実際の現象における規則性の厳格な記述とは別に我々が通常受け入れている一般的な通念であり,人間生活の前提であるが,このこと自体を論証することは至難であると記されている.ここで重要な点は,我々人間は誰しもそれが真実かどうかは別として何らかの因果律を自覚的あるいは無自覚的に受け入れて自らの活動の前提としているという点と,それは研究者による研究活動に関しても同様だという点である.

抜粋,終わり.

私たちは認識対象に何らかの因果モデルをあてはめて見ようとします.そのモデルの妥当性に対して普段どれくらい自覚的であるか,自省の眼差しを向けているかというと,それは私自身を振り返っても心許ない部分が多くあります.気がつけばいつの間にか受け入れられている因果律であっても,人によっては受け入れている因果律に違いがある場合があり,しかもそのことで対話不可能状態が生み出されていることもあります.

こうした問題意識は,最近,慶応大学の高木晴夫先生と中小企業基盤整備機構の笠原一絵さんと共著で書いた論文「新たな組織論:要素還元型と生命型の併存」とも共通する部分があります.

今回の論文では,直線的因果律と循環的因果律を内容的に整理し,先行研究に見られる対話の齟齬を紐解き,異なる因果律が社会現象の理解,運営,生成にどのように補完し合えるのかを議論しています.ご関心のある方は是非ご一読頂き,ご感想等頂ければ幸いです.