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ペンギンズ・リスト

先日、2月11日の日本経済新聞の四国経済面に、現在、香川大学大学院地域マネジメント研究科(ビジネススクール)で行われている実践型社会企業家論の記事がかわいらしく掲載されていました。今日はその内容と、実践型社会起業家論の授業について少しご紹介したいと思います。

記事ではペンギンズ・リストと我々が呼んでいる受講生名簿の話が紹介されていました。これは、カーネギー・メロン大学教授を務められたランディ・パウシュさんの著書「最後の授業 ぼくの命があるうちに」で紹介されているエピソード(同著のp.172にある「「最初のペンギン」になる」という箇所)に触発されて作りました。

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実践型社会企業家論で私達は、彼のメッセージである勇気ある最初のペンギンになることを目指しているのです。

ペンギンが崖の上から冷たい海に群れをなして飛び込む姿をテレビなどでご覧になったことがある方は多いと思います。一見、かわいい風景なのですが、実は生死をかけたダイブなのです。海の中には捕食者が待ち構えているかもしれないからです。飛び込ばなければ魚を食べることができない。でも飛び込めば逆に食べられてしまうかもしれない。だからペンギンは誰か最初に飛び込んでくれる勇気あるペンギンを待っています。そのペンギンが無事に海を泳ぐことが出来れば、後は我先にと海中に飛び込むのです(ペンギンの場合、実際には勇気があって飛び込むというより、他のペンギンに突き落とされて仕方なくということのようですが、そのことはここでは置いておきましょう)。

とにかく、共同体には一匹の勇気あるペンギンが必要だという話なのです。そして、一匹が飛び込むと次々と後に続くペンギンが現れるという点も重要です。パウシュ教授は、むずかしいことに挑戦して失敗をおそれるなと学生を励まし、最大のリスクをおかして新しいアイデアや技術に挑戦した人にペンギンのぬいぐるみを「最初のペンギン賞」として贈呈したのだそうです。

私達が実践型社会起業家論で実現したいことは、この一匹の勇気あるペンギンを生み出すことです。人のしているいいことはすぐに真似ようとするフォロワータイプの私は、すっかりこのエピソードに感銘し、私達の実践型社会起業家論でも「勇気あるペンギン賞」を贈呈することにしました。これは次回、2月24日に行われる受講生によるビジネスプランの発表を審査して贈呈する予定です。

ペンギンのぬいぐるみを入手するのには若干苦労しました。どこで売っているのかわからず、最終的にヤフオクで落札しました。高さ40センチほどの堂々たるぬいぐるみです。「ぺそぎん」と言うそうです。ちゃんと新品です。

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結構カワイイ!勇気あるペンギン君

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ちょっと研究を手伝ってもらったりして・・・

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よしっ、ノッてきたぜ!

さて、ペンギンズ・リストの話に戻ります。ペンギンズ・リストは受講生名簿なのですが、手書きで小さな短冊形の紙に受講生自身が自己紹介や起業したい分野、人によっては連絡先などを書き込んで、それらを貼り合わせて作った名簿です(手間ヒマかかってます!)。個人情報保護の観点から、リストに書き込む内容は受講生間で公開してもよいと受講生自身が判断した内容だけになります。受講生は、香川大学ビジネススクールの学生と一般の聴講生の方で3対7くらいの比率だと思いますが、このリストを、自分と同じ分野に興味のある人と出会い情報交換するための仕組みにしています。

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手作りの受講生名簿 「ペンギンズ・リスト」

万が一にも、折角勇気あるペンギンが海に飛び込んでくれたのに、誰も見ていなかったという事態は避けたいものです。ネットワークづくりはこの授業でとても大切にしていることです。

ネットワークづくりのためには、他にもしていることがあります。1つはSNSの活用で、毎日受講生同士で情報交換が行われています。そして、もう1つは授業終了後の懇親会です。毎回ピザを頼んで、1時間程度、ワイワイやっています(ちなみにソフトドリンクのみの懇親会です)。

さて今月24日のビジネスプラン発表会がどうなるか、勇気あるペンギンは現れるのか、今から本当に楽しみです。

大切な一区切り

暦の上では冬が終わり、昨春からスタートしたプロジェクト演習・プロジェクト研究(いわゆるゼミに相当)もついに最終局面、卒業前の大切な一区切りの時期に来ました。先日、2月9日にプロジェクト研究論文の提出が締め切られ、私と一緒に学んだメンバー達は全員無事に論文を窓口に提出することが出来ました。

香川大学ビジネスクール(大学院地域マネジメント研究科)では、2年生になると修士論文に相当するこのプロジェクト研究論文に取り組み、指導教員の下で研究論文または実践的なビジネスプランの作成などを行うことになっています。

当研究科の学生の多くは社会人であり、昼間は企業や行政の場で活躍しながら夜間や土日に勉強するというかなり大変な毎日を送っているのですが、2年次に課されるプロジェクト研究はそうした彼・彼女らにとって卒業前の最後の試練となります。この試練を超えなければ、MBA(経営修士(専門職))の学位が授与されません。

ここには書きあらわせないのですが、仕事と家庭を抱えながらプロジェクト研究に取り組んでいく途中には、本当に大小さまざまな試練がそれぞれの学生の皆さんの前に立ち現れてきました。そんな試練の道中に、私自身はなかなか彼・彼女らのよき対話者、伴走者になりきれなかったという反省は沢山あるのですが(本当に申し訳ない)、今年もまたそれぞれが見事に試練を乗り越えてプロジェクト研究を完走してくれました。

私にとってももちろん感無量の瞬間ですが、仲間とともに努力を重ねてきた学生の皆さんにとっては特に格別の瞬間です。メンバーの一部の方が窓口に提出した後、私の研究室に来て、最終版の研究論文を手渡してくれました。

その時のメンバーから許可を得て、記念すべき瞬間の写真を紹介させてもらうことにしました(写真撮影、田中豊教授)。

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試練の中を共に歩んだ1年の重みを感じつつ・・・

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こんな感じでしっかりと受けとりました(左から山本さん、河原さん、八木、西坂さん)。



そして・・・

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喜び爆発!!!

さあ、これで大きな一区切り。新しい挑戦に向け、またこれからがんばっていこう!!!

実践型社会起業家論 経過報告(1月20日)

1月20日の実践型社会起業家論は税理士の脇坂誠也さんをお招きして行われました。

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脇坂さんは、20代の時に会社を辞め、海外青年協力隊の一員となってコートジボワールへ赴任され、帰国後に税理士の資格を取得されました。現在は社会起業家支援を手掛ける税理士の日本における草分け的な存在として知られている方です。本業の税理士としてのお仕事以外にも、社会起業家への会計知識の普及や全国のNPOの会計担当者のネットワークづくりなど様々な活動をされていらっしゃいます。脇坂さんが開設されている「NPO会計道」というブログには、脇坂さんの日頃の活動の様子だけでなく、社会起業家向けの会計知識がとてもわかりやすく書かれています。同ブログは、日本財団が主催するCANPANブログ大賞を獲得されていて、読者にとって読みやすい工夫がされており、私も参考にしたいと思っているおススメのブログの一つです。

講義は、「社会起業家の経営戦略と会計」と題して、社会起業家が任意団体からNPOや株式会社、LLC(合同会社)、新公益法人(一般社団法人と公益社団法人)など様々な法人格を取得していく上での選択のポイントや会計上の違い、将来的に認定NPO法人や認定公益法人を取得していくことの意義や認定の基準などについてお話をお聞きしました。

実践型社会起業家論の受講生で公認会計士をしていらっしゃる長田公仁さんのブログ「公認会計士・税理士長田公仁の挑戦」では、当日の授業についてのレポートがされていますのでご興味のある方は是非ご覧になってみてください。

なお、脇坂さんに教えてもらった読みやすいブログを作るコツですが、これは脇坂さんのブログにもくわしく書かれているのですが、ブログに目次をつけることだそうです。脇坂さんはNPO会計の専門家としてブログ自体がその分野の解説書のような機能を持っているため、特に目次をつけることで読みやすさが増しています。私のブログでは、目次どころかカテゴリーもきちんと分けずにいる状態なので将来的な課題かなと思っています。

脇坂さん、貴重な学びをありがとうございました!

実践型社会起業家論記事

1月14日、実践型社会起業家論が日経産業新聞に記事として掲載されました。

日経産業新聞の過去の記事は、Nikkei gooから検索可能です。

日経4紙記事にチェックを入れた上で、「実践型社会起業家論」などで検索すると記事タイトルがでてきます。

記事検索は便利なのですが、日経の場合はタイトル以外の本文検索は有料です。

実践型社会起業家論 経過報告(12月16日分)

1月13日、実践型社会起業家論の今年最初の授業が行われました。

昨年12月13日からしばらく更新が途絶えておりましたので、経過報告をいたします。

まず、昨年の12月16日の授業から先に記しておきたいと思います。

12月16日は、実践型社会起業家論の第2回目の授業でした。

講師にはニッセイ基礎研究所の取締役研究理事を務められる神座保彦さんをお招きしました。

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神座さんに今回ご登壇頂いたきっかけは、私がこの授業の教科書として使用できる参考文献を探していた時に神座さんのご著書「概論ソーシャルベンチャー」を発見し、内容が網羅的かつ実践的であると感銘したことでした。

授業では、神座さんご自身が日本生命でファンドマネージャーとして、あるいはベンチャーキャピタリストとして多くの経営者、起業家と出会ってこられたご経験を基に、社会的起業家が見落としやすい視点を大変わかりやすくご説明くださいました。

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私が印象に残ったのは、ボランティアや慈善活動の延長としてソーシャルベンチャーを捉えている人達が直面しやすい壁として、しっかりとしたビジネスモデルを構築することなく、とにかく熱い気持ちだけで走り続け、結果的に息切れを起こしてしまう事例が多いという話でした。これは大変もったいないことです。持続的な社会貢献が出来るためには、社会から頂いた有形無形の助力を効率的に活用できるかが重要なポイントとなります。非効率にしか活用できないとわかっていたら、あるいはもっと効率的に活用してくれる組織が他にあることがわかれば社会からの助力(一種の投資)もやがて減っていきます。当然のことながらしっかりとしたビジネスモデルや事業計画が必要となります。神座さんは、多くの例を挙げながらビジネスモデル(組織の外部および内部環境から効率的・持続的に経営資源を獲得し、活用していく仕組み)と社会貢献モデル(組織の持つ経営資源を社会的な成果へと転換する仕組み)を両立させるソーシャルベンチャーの仕組みづくりについてご説明くださり、私自身も大変勉強になりました。

受講生の皆さんとのディスカッションや発表もとても聞きごたえのあるものでした。

<下の写真はグループでのディスカッションと、発表の風景>

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神座さん、ありがとうございました!

実践型社会起業家論 経過報告(1月13日分)

1月13日は第3回目の実践型社会起業家論の授業でした。講師には鵜尾雅隆さんをお招きし、「社会を元気にする事業とお金の流れ」と題して授業をしていただきました。

さて、授業の中身をご紹介する前に、本授業で言うところの社会起業家とは何を指すのかというお話をしておきたいと思います。学術的な定義は研究者によって多様だと思いますし、実際問題としてあまり定義にこだわる大きな意味はないのですが、最近よくご質問も頂きますし、本授業のお話を紹介する前置きとして記しておきます。本授業では社会起業家を、社会の問題を解決したり、社会をよりよいものにすることを目的として、社会から様々な形で経営資源を獲得し、それを効率的に活用するために、目的を共有する人々と共に活動を組織化し、その運営に携わっていく人々として幅広く定義しています。特に株式会社やNPOなどの法人格によって規定されるものではありません。一般的な起業家・経営者との違いを挙げるとすれば、それは目的における優先順位ということになります。社会起業家にとっては、経済的な収益の最大化や事業そのものの存続は最大の目的ではありません。社会起業家においては、社会的な貢献が他の目的よりも重要度の高い目的になります。ここで示した定義は、元々は神座さんから教えてもらった内容をベースに書き起こしたものです。内容的には私の知る他の社会起業家の方達も同意してくださるものであり、私の授業ではこうした定義を採用しています。

さて、少し前置きが長くなりましたが、鵜尾さんはこうした社会起業家がいかに資金を獲得することができるかという大変重要なテーマを講義してくださいました。私自身、熱意があるという段階と、その熱意を社会の中で形に変えて活動しているという段階の間には大きな川のような隔たりがあると思っています。それは形を創っていくには、想いだけではなくお金や仲間が必要だからです。鵜尾さんはファンドレイジングを職業としてご専門とされていらっしゃる方で、熱い想いを形にしたいという人たちの力強い味方です。

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授業の中で私が心に残ったのは、社会起業家は社会の問題を訴え、その解決策を提示し、その解決策に対して「共感」をベースとした助力を社会から得なければならないというお話でした。シンプルに言えば、「思わず共感してしまう」→「だから寄付してみよう」とか「だから出資してみよう」とか「だから一緒に働いてみよう」といった動きを引き起こせるかという点がファンドレイジングで重要なポイントです。

1つの事例として「伝説のホテル」という映像を見せて頂きました。その映像は鶴岡秀子さんという方が、自らの夢である伝説のホテルを実現するために行ったプレゼンテーションが収録された映像でした。私はその映像に感動してぼーっとなり、そして熱いものを感じました。鶴岡さんのプレゼンテーションは、私の中からも思わず「何か協力したい!」という感覚を引き起こしました。そして実際、鶴岡さんは社会に新しい動きを引き起こしています。1軒のホテルも経営したことがなく、1度もホテルで働いたことのない鶴岡さんが、その後3億円以上の出資金を集め、土地所有者の方からホテル用地提供の申し出を受け、一流の建築家が図面を描いてくれたという事実がまさにそのような社会の動きを示すものです。

ファンドレイジングをお仕事としようと決意し、独立し、全国を飛び回っている鵜尾さんの授業から私が感じたことは何より「熱」でした。日本の寄付金市場は2000億円、アメリカではそれが20兆円だそうです。だからこそ日本はこの分野でもっともっと潜在的可能性がある!というのが鵜尾さんの持論です。そして授業では、市民の力で世界をよくしていくためには、社会起業家にもっともっとファンドレイジング力が必要だという鵜尾さんの信念がひしひしと伝わってきました。

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13日は授業後も深夜遅くまで鵜尾さんでずっと語り合わせて頂きました。鵜尾さん、熱をたくさん頂きました!ありがとうございました!!!

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