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日経トップリーダー 3月号・4月号 修羅場の後継学

日経トップリーダーの4月号が発売になりました.4月号には「修羅場の後継学  父に認めてもらおうと新規事業に進出し失敗」を寄稿しています.また,1ヶ月前になりますが3月号にも同じく「修羅場の後継学 父が突然、脱同族経営を宣言」を寄稿しました.今回は,特にファミリービジネスで起こりやすい父と子の葛藤から生じたリアルな修羅場のストーリーです.



振り返ると去年の4月から連載を開始してあっという間に1年以上が経っていました.編集部の方からも読者の方からの反響がよいということで,実は当初3ヶ月のお約束でスタートした連載でしたが延長を繰り返して1年間続けることになりました.この間,何度も取材のために北から南まで全国を出張してきました.読者の方々からのご感想のメールや,事業承継やリーダーシップについて話し合いたいので是非お会いしたいと書いて下さったメールも何通も頂き,とてもうれしかったですし,ネットワークを広げることも出来ました.

経営者の友人やコンサルタントをしている友人の中には,八木 が連載をはじめたのをきっかけに日経トップリーダーを読み始めてくださった方も何人かいらして,よくポジティブなフィードバックや修羅場情報を頂きました.これらもいつも励みになっています.当たり前のことかもしれないのですが,単に「見たよ!」とか「面白かった!」みたいな短いものも含めてフィードバックを頂けることがこんなにうれしいものだと実感し,私も負けじとフィードバックするようになりました.

修羅場に関する個人的な経験を語って頂く取材で大変な点は,やはりそういう経験を持った方々に出会うための事前の情報収集だと思います.取材をさせて頂いても,記事としてまとめるには修羅場の程度がそれほどではなかったりすることもありますし,ご自身の修羅場を語りたがらず取材をお断りになる方もいらっしゃいます.連載をはじめてから「いい修羅場ないかな?」とアンテナを張り巡らせる修羅場ハンターになっていますが,そうそう頻繁に出会えるものでもなく,修羅場のお話を聴かせて頂けるとお宝に出会ったようにうれしくなります.取材に応じてお話しして頂いたに方々も,それまであまり人に語っていなかったことを言葉にしてアウトプットすることで新たな視点を得られる方が多く,ストーリーテリングの効果が大きいことを感じます.

今年はこれまでにないほど早い仕事のペースになっているので,あとどれくらい修羅場ハンターを続けられるかわかりませんが,続けられる限りは楽しんでやっていきたいと思います.これからもご感想やご意見,取材に関するご依頼等,楽しみにお待ちしております.メールはこちらからお願いいたします.

ファミリービジネス研究の現状

2010年3月16日,慶應義塾大学にて「ファミリービジネス研究の現状」というテーマで講演をいたしました.

私自身が,ファミリービジネスに着目している理由はいくつかありますが,中でも大きな理由の一つは,長期にわたって継承され繁栄を続けているファミリービジネス経営者に見られる特徴として「世代超越性」があるためです.世代超越性は私の造語ですが,経営は自分が前の世代から一時的にお預かりしているもので,これをまた次の世代に良い形で受け継いでいくことが自分の使命だと感じる意識です.当然のことながら,経営を考える時間軸の幅が自分の寿命を超えて広くなります.長期の時間軸で経営を考えているので,ステークホルダーとの関係においても誠実さや信頼を重んじる態度が貫かれます.

もちろんこの世代超越性は全てのファミリービジネスに共通するということではありません.しかし,優れた経営を続けているファミリービジネス企業では,経営者に対するインタビューや,家訓などを調べたときにこの世代超越性が見られることが多くあります.

こうした長期の時間軸を念頭においた経営をしているファミリービジネスが,現代社会に対して示唆に富んだメッセージ性を持っていると感じるのは私だけではありません.先日の講演の後もファミリービジネスの経営者の方々や研究者の方々と意見交換をさせて頂きましたが,地域社会への貢献を続けるファミリービジネスが多いのもこうした時間軸に対する意識と無縁ではないという意見で多くの方と一致しました.

大変有意義で学びの多い研究会でした.お招きいただいた飯盛先生をはじめスタッフの皆様に心から感謝いたします.

直線的因果律と循環的因果律の対比と対話

以前から,直線的因果律と循環的因果律の間に横たわっていた断絶について一度正面から考えてみたいと思っていました.今回,自分なりに論点を整理し,香川大学経済論叢に「方法論的立場としての直線的因果律と循環的因果律の対比と対話」として寄稿いたしました.

以下,一部抜粋です.

そもそも因果律(the universality of causation)とは哲学の用語である.岩波哲学・思想事典における「因果律」の項目には,すべての出来事には原因があるという因果律の考え方は,実際の現象における規則性の厳格な記述とは別に我々が通常受け入れている一般的な通念であり,人間生活の前提であるが,このこと自体を論証することは至難であると記されている.ここで重要な点は,我々人間は誰しもそれが真実かどうかは別として何らかの因果律を自覚的あるいは無自覚的に受け入れて自らの活動の前提としているという点と,それは研究者による研究活動に関しても同様だという点である.

抜粋,終わり.

私たちは認識対象に何らかの因果モデルをあてはめて見ようとします.そのモデルの妥当性に対して普段どれくらい自覚的であるか,自省の眼差しを向けているかというと,それは私自身を振り返っても心許ない部分が多くあります.気がつけばいつの間にか受け入れられている因果律であっても,人によっては受け入れている因果律に違いがある場合があり,しかもそのことで対話不可能状態が生み出されていることもあります.

こうした問題意識は,最近,慶応大学の高木晴夫先生と中小企業基盤整備機構の笠原一絵さんと共著で書いた論文「新たな組織論:要素還元型と生命型の併存」とも共通する部分があります.

今回の論文では,直線的因果律と循環的因果律を内容的に整理し,先行研究に見られる対話の齟齬を紐解き,異なる因果律が社会現象の理解,運営,生成にどのように補完し合えるのかを議論しています.ご関心のある方は是非ご一読頂き,ご感想等頂ければ幸いです.

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