卒業と入学の間
2008.04.01
先日、当研究科のプロジェクト研究発表会と卒業式があり、32名のMBAが巣立っていかれました。
私にとってははじめて送り出した卒業生。
本当に感慨深いものがありました。
特に毎週修士論文作成のためにディスカッションを続けてきたプロジェクト研究メンバーの皆さんとの関わりは本当に楽しかったし、思い返せばあっという間でしたが、もうあのディスカッションが出来ないかと思うと寂しい想いがします。
傾聴とストレスの関係を実証し今年度から広島大学の博士課程に進学することが決まった塚元さん、いつも一番早く来てしかもゼミの雰囲気を明るく盛り上げてくれた枝川さん、商業高校にケースメソッド授業を導入するという新たな挑戦をしてくれた松下さん、同じく大学のパーソナル・ファイナンス教育にケースメソッド教育を導入するという新たな挑戦をしてくれた鈴江さん、テーマに悩みぬきながらも社員を幸せにする企業年金のあり方を研究した大野さん、厳しい財政状況にある地方自治体とNPOの協働について意義ある提言をまとめた上川さん、ご卒業おめでとう!
そして32名の卒業生の皆さん、それぞれの場でのご活躍を心より祈念しています。
今週の金曜日には新しく新入生の方たちが入学されます。
大学の桜はちょうど五分咲きくらいでしょうか。きっと入学式当日には満開の頃だと思います。
入学を心より歓迎します。
実践型社会起業家論を開講します
2008.03.19
2008年度 地域マネジメント研究科の特別講義(後期・2単位)として「実践型社会起業家論」を開講することが正式に決定しました。
当科目は私、八木が担当です。
この科目は、当研究科で地域活性化に熱い志を持っている学生の皆さんとの対話の中でその開講の必要性を感じ、開講に向けて昨年からコツコツ準備をはじめたものです。
地域が活性化するには志高い人同士が互いに顔を合わせながら切磋琢磨し合えるような新しい学びの場が必要ではないか、情報とノウハウそして熱を交換をしあえるネットワークが必要ではないか、活性化に取り組む人材をサポートする仕組みが必要ではないか、具体的にはそういったことを考え、ようやく新規科目の開設という形で自分なりに学生の皆さんに応える一歩を踏み出すことができました。
ところで社会起業家(Social Enrepreneur)については、まだ耳慣れない印象をお持ちの方もいらっしゃると思います。
現在、社会起業家については研究者によって様々な定義がありますし、日本語訳も社会的企業家など様々なものがあるようです。
私としては、①社会的なミッションをベースとした活動主体であること、②高いレベルで事業性と社会性のバランスを追求していること、③地域の人々や社会と協働的かつ互恵的な関係を構築することに重視していること、などが重要なポイントだと考えています。
したがって単純に営利か非営利かということで定義されるものではなく、営利企業であっても高次の社会的なミッションが具現化していれば社会起業家でありえるし、逆に事業性が全くなければ非営利であっても社会起業家ではないということになります。
まだ授業の中身については十分に準備できていないのですが、これから多くの方のご意見なども頂きながら現時点でベストと思われる内容と水準を実現していきたいと思っています。
なお、本授業は日本財団さんから助成金を頂けることも決定しました。
この経緯についてはいずれ改めてブログでも紹介したいと思いますが、大変ありがたいことで、おかげさまで授業を通じて様々な実験的な試みもできる環境が整いました。
そして助成のおかげで当研究科の外部の方にも当授業を聴講していただける仕組みも整いつつあります(このことも改めてご案内する予定です)。
日本財団さん、ありがとうございます!
中国MBA事情
2008.03.06
本日はハルビン工程大学の経済管理学院から馬永紅先生とYu春紅先生を当研究科にお招きし、中国におけるMBA教育の改革と発展と題して講演を頂き、その後、我々教員との意見交換を行いました。
以下、気になる中国のMBA事情を馬先生の講演を基に簡単に紹介したいと思います。
中国でのMBAは1988年ごろから設立が準備され、1991年から1994年にトップ大学9校に最初の認可がおりて開講されました。
その後、1998には54校に拡大され(ハルビン工程大学では97年に開講)、現在では127校、延べ卒業生が8万人にもなるそうです。
MBAに関して古い歴史はありませんが、中国MBAの勢いを感じます。
カリキュラムは全国的にかなりの程度統一されコア科目12科目は全国共通の設置になっているそうです。
入試も全国共通のテストを受けるそうです。
教育方法はケースメソッドが中心で、統計など一部科目を除きすべての科目でケースが用いられています。
しかも、どの科目でも最低でも6ケースは授業にケース教材を使用しなければならないといった細かい規定もあるのだそうです。
また、全国MBA教育指導委員会という組織が設置されており、国レベルでMBAの質の管理と向上を図っており、学校を超えたFD(fuculty development)活動が頻繁に実施されているとのことでした。
ケースは欧米のものも使われるようですが、最近では中国内のケース開発に力を入れており、大学を超えたケース共有センターという組織が設置され、そこに開発されたケースが登録されてメンバー校には無償で使用が許可されています。
ただしメンバー校になるには年間2ケース以上を開発し、ケース共有センターに登録し続ける必要があるとのこと。
なかなかしっかりした仕組みが整っています。
他に面白いと思った点は、ハルビン工程大学の場合、教員の質の確保に関しては学生による教員評価が低い教員を他学部などに異動させるといった仕組みが整っているそうです。
MBAは学費が特に高く社会人学生の授業への期待が高いこと、また学校間の競争が激しいことなどがあり、教員の質は大学内でもトップレベルの人員を戦略的に揃える必要があるのだそうです。
なおほとんどのMBAの教員は学部との兼任であり、MBAを外された場合は経済学部専任になることが多いそうです。
こうしたマネジメントがなされているケースは日本では聞いたことがありません。
日本の大学以上に戦略的かつ流動的な人材マネジメントがなされていると感じます。
なおハルビン工程大学は歴史のあるとても大きな大学ですが、馬先生やYu先生が所属する経済管理学院(日本の経済学部にあたる)もとても規模が大きく設備も整った学部です。
これまでで既に1100人のMBAを輩出してきたそうです。
他にもカリキュラムなどでユニークな点がいくつもあり予想していた以上に参考になる点が多い講演会でした。
馬先生、Yu先生、ありがとうございました!